あなたが幸せになるための朝(成)

あなたが幸せになるための朝(成)

怪物が怪物たる由縁②

――俺は、自分の本能を制御しなければならない。 吸血衝動を重くしている一因は飢餓だろう。 血を飲むべきだ。恋人の真似事をする必要は無い。夜道で襲って記憶を消せばいい。獣同然の所業は苦しいが相良を傷付け...
あなたが幸せになるための朝(成)

怪物が怪物たる由縁①

吸血鬼に添う、不死の生き餌の成立条件。 人間が「その身の全てを委譲する」と、吸血鬼に『許可』すること。 彼女は条件を満たしてしまった。本来なら相応の手順を踏むはずのものが繋がった経緯はわからない。機序...
あなたが幸せになるための朝(成)

彼女が伝えたいこと②

勝手知ったる住居で率先して家事を奪いながら、マキさんにお伺いを立てる。「此処もあちらも貴方のお宅ですから、全面的に貴方の方針に従います。代わりに家事労働は教えてください。……何かありませんか。私が担え...
あなたが幸せになるための朝(成)

彼女が伝えたいこと①

兄に決別を告げるため、中央のマキさん宅に帰った。 慣れのある居住空間にようやっと息がつけた。此処も私の住まいに比べればかなり上等だが洋館よりは親しみやすい。道理で彼が私の住居を犬小屋みたいな目で見るわ...
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怪物のすみか

彼女を、森の奥から繋がる領域に在る「隠れ家」に招いた。 俺が吸血鬼として暮らすため設えた本来の住処のひとつ。深い雪を踏み越えるのは骨が折れたが、それは人間が近寄り難いという事でもある。 認知阻害や侵入...
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怪物が見つけた役割

壊れた入口や壁板の隙間から、月の光が差し込んでくる。 朽ちかけた社に響く寝息は浅く、彼女の目覚めを予感する。抱き締めていた身体にだいぶ熱が戻って安堵したが、遅れて過ちに気付いた。 彼女は身体接触が苦手...
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怪物と土地神の邂逅②

『責任とる覚悟決めた?』 獏から尋ねられた時点で、既に手遅れだったのだろう。 不死者《ばけもの》から人間への干渉は禁じられている。その掟に忠実な獏が、彼女の傍にいる吸血鬼《おれ》を止めなかった理由。獏...
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怪物と土地神の邂逅①

彼女の手紙には詳細な予定が記載されていた。必ず帰るとの念押しもあった。 だが、母親の墓参りは突拍子もなく見えた。彼女から聞いていた限り仕事のあった日程が旅程にすり代わっていて疑問も浮かび、その答えが「...
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彼女の里帰り

北の街からさらに山間へ――深い森の傍にある小さな集落。 母が、自身を加害した貴族から身を隠し、私たち双子が生まれ、幼少期を過ごした村。 交通手段が欠けてからは、徒歩で旅をしていた。 考える時間が欲しか...
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閑話:悪友

「そういうわけで、師匠に破門されました」「ひと言で済ましていい話じゃ無くね?」「仕方ないよね。あの人言いだしたらきかないし」「飲み込めねぇのオレだけ? ウソじゃん」 琥珀とヒサメが納得する横で、アザミ...