あなたが幸せになるための朝(成)

あなたが幸せになるための朝(成)

演技と周囲と彼女の答え②

北に向かう道中で仕事着に着替え、意識を「善良な町娘」から「琥珀」に切り替える。 何度か胃の中身を吐いて、腿に刃物を突き立てた痛みで正気に戻し、調《ととの》えた。 最近ことに演技酔いがきつい。日増しに戻...
あなたが幸せになるための朝(成)

演技と周囲と彼女の答え①

数日間にわたり一幕ずつ物語を紡いできた公演日程、その最終日。 いつものように、最終幕まで演奏し終えた兄に花束を渡した。お疲れ様と笑って抱き締めた兄を楽団員のほうに送り出し、劇場裏方の控室で兄を待つ。「...
あなたが幸せになるための朝(成)

怪物に届いた便り

彼女は、双子の兄と再会した。 楽団の公演に通いはじめた――兄が彼女に会いたいと言ったから。 服飾品が揃った――町娘の変装用。彼女が着たくもない服ばかり。 笑顔が増えた――空元気に似た、感情の伴わない笑...
あなたが幸せになるための朝(成)

彼女は楽団に出向く②

公演後、打合せ通りにアオ殿と落ち合った。青い髪がよく目立って助かった。 先日の非礼を詫びるとあちらも土下座し謝罪合戦になってしまったので、やめましょうと合意する。マキさんには席を外していただこうと交渉...
あなたが幸せになるための朝(成)

彼女は楽団に出向く①

「楽団の公演を拝聴して、座長殿とお話したく考えています」 案の定、マキさんからは反対された。 けれど本題は楽団ではない。自分の身の振り方を考えるにあたり、楽団という選択肢を直視する必要があるというだけ...
あなたが幸せになるための朝(成)

彼女と転職のすすめ

北へ一時帰宅した。マキさんも来た。師匠から「変態引っ付けて来んな」と言われた。 師匠は彼を警戒していた。師匠個人について、マキさんから探りを入れられていないか尋ねられた。聞かれても喋る気はないと伝えた...
あなたが幸せになるための朝(成)

怪物と歌の魔法

彼女は徐々に復職した。「もう動けます」と押し切られたのは否定しない。 師たる男の采配で、中央での仕事を回して貰っているらしい。軽いものから体調を窺いつつ始まった仕事は、三日に一度ほど外出していく頻度に...
あなたが幸せになるための朝(成)

怪物は寄り添いたい

彼女の受継ぐ「魔法」の本質は、「発信」なのだろう。 感情および情景の伝播。同一心象を想起させる共感覚の伝染。彼女が皆伝できなかったと悔やむ魔法は、彼女の無自覚のうちに発現していた。 彼女は俺を案じてい...
あなたが幸せになるための朝(成)

彼女の傷③

過去を少しずつ切り分けながら、マキさんと言葉を交わす。 まとめて終わらせれば早かろうに、そうしない。どんな見極めをしているかは分からないが、休憩しようという台詞でその日の課題はお終いになる。「養父が兄...
あなたが幸せになるための朝(成)

彼女の傷②

「……絶対に無理はしないで欲しい。少しずつでいいから」 私にまつわる過去の事実と、そうでないことを分けて書き出して欲しいと言われた。 養父は私の男親かも知れない、という憶測を喋ったのがまずかったかと思...