落日、硝子が割れる

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2-7 迷い

羽住が指定した会談場所は、北支部の有る土地から離れた、中規模都市の駅前だった。 駅舎と周囲の商業施設とを接続し、駅前広場を兼ねた広い高架歩道は人で溢れている――部活帰りの学生、帰路につく勤め人に、飲み...
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閑話:夏の温度

茹だる酸素と陽炎の熱。 鬱陶しくて歓迎されない夏の気《け》ばかり凝らし固めた青の日和は、口が裂けても快適とは言い難く。 人を殺せる陽気の盛りをやり過ごせそうな喫茶店へ、路地を曲がった先。その店|面《お...
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2-6 長い夜の夢

北で最大規模を誇る夏祭りは、遠方からも多くの観光客が詰めかける。 夜店が並び、山車がひしめき。囃子と燈火《ともしび》で宵の静かがなりを潜める――ひとびとの多くが、華やかな夏の夜長を大いに楽しむ。 普段...
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2-5 鬼の末路

「おに」 喫茶店。他席から聞こえた単語に、女子高校生がびくりと肩を跳ねさせた。 問題集を解く手が止まり、恐る恐る周囲を見回す。 談笑するテーブル席の方角を見やるも、彼女が恐れた話題かどうかも判別できな...
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2-4 都市伝説

とってもよく効くおまじないがあるんだ。 うん、いま流行っているあれかって? うんざりしてくれるな。なんたってこれが正真正銘「本物」だとも。ほかのは全て偽物だ。賭けたっていい。 必要なものは、目立たない...
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2-3 いい子

「君は先祖返りだね?」 帰宅途中の小一男児をファミレスに連れ込んだ若い男が、悪びれもせずアイスティーを勧めてきた。「けいさつよびます。さよなら」「ふふ、健在で良かった。また会えて嬉しいよ。……料理は好...
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2-2 騎士の祈り

見渡す限り、人間の海だった。 スーツ姿の中年男性。学生服男女。年配の女性。派手なスウェット上下、男。男、女、男男、女女、男、人人、人、人人人人人人人人人人ひとひとひ――――「冬部《ふゆべ》さん。それ、...
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2-1 現実主義者の暗躍

細かな水滴が肌を叩き、伝い流れて床を打つ。 浴室の扉越しにくぐもる音が、薄暗がりに沈む部屋へと染み込んでいく――水回りから居間。ソファ、ローテーブルに、書籍の詰まった本棚が複数。過剰に簡素な輪郭は、モ...
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プロローグ

「三男だろう」と言われた。 子供心に抱いていた希望のようなものは、すべからく、その言葉で一蹴された。 放心していたのは初めだけだ。利口な頭はすぐ、一子相伝の武家の伝統、血統の繋げ方――大人の事情のあら...