早朝の闇のなか、地下へ降りてくる靴音がある。
かつんと硬質な威嚇を聞き取り、牢の中の囚人がゆっくり起きだした。
「出ろ。雨屋浩太」
彼は柔和に微笑んで、高圧的な指示通り従順に身支度を整えた。
聴取はとうに終わった。長い空白を置いての突然の呼び出し――職員の案内によって通された見知らぬ小部屋、そこに満ちる物々しい空気は、これから何が起こるかを如実に語る。
「本日、貴様の刑を執行する」
手錠がかかり、目隠しをされる。
雨屋はある地点まで誘導され、首に縄を掛けられた。
彼の足元の床が抜ける。
落下した自重が縄に掛かり、吊られた身体は軽く跳ねた。
ぎ、――ぎちり。ぎちり。
縄が揺れて、軋む。
薄く、細長い身体がゆらめく。四肢はだらんと落ちていた。
痩せ細って骨ばかり。貧相な肉体ではあれ、それなりの重量はあるらしい。
ぎち。ぎ、ぎちり、ぎぎ。ぎ。
ぎ、ぎち。――――ぎ、
